あまり知られていない西洋音楽史~古典派時代~
ムツィオ・クレメンティ
クレメンティは1752年にイタリアで生まれた作曲家です。
ソナチネや練習曲でおなじみですね。
派手さの少ない作曲家ではありますが、この方も古典派時代には外せない作曲家の1人と言えます。
代表曲
- ピアノ協奏曲 ハ長調
- ソナチネ op.38 op.37-2
- 段階的な6つのソナチネ
- ワルツ
- ハープシコードもしくはフォルテピアノのためのカプリッチョ
- ハープシコードもしくはフォルテピアノのための6つのソナタ op.1
- ピアノフォルテのための4つのソナタと2重奏 op.12
- グラドゥス・アド・パルナッスム op.44
ご紹介させていただいたのはほんの一部ですが、クレメンティは「ハープシコードもしくはピアノフォルテのための」というタイトルの曲をいくつも作曲しています。
ハープシコードというのはチェンバロ、フォルテピアノはピアノの前身である現在のピアノに近い楽器です。
作品名からもわかる通り、クレメンティはチェンバロからフォルテピアノへの移行期間にどちらでも演奏可能な作品を残しています。
また、作曲だけでなく楽器制作会社の立ち上げ、楽譜出版など他の作曲家とは一味違う活動をしていました。
フランツ・ヨーゼフ・ハイドン
ドイツ国歌にも使われている旋律を作り上げた作曲家、ハイドンは1732年にオーストリアで生まれました。ハイドンは古典派時代の最重要人物です。交響曲、弦楽四重奏、クラヴィアソナタの器楽分野すべての曲を完成させ、古典派音楽を確立しました。古典派音楽の父としても有名ですが、膨大な数の交響曲、弦楽四重奏を作曲していることから「交響曲、弦楽四重奏の父」とも呼ばれています。
ハイドンは今ではちょっと影を潜めた存在になりがちですが、当時の人気はすさまじく、音楽家からの信頼も厚かったのです。ハイドンが作曲していなくても「ハイドンの名前を使えば人気が出る!」と彼の名前をタイトルに使った曲があるぐらい人気の作曲家でした。
おすすめ曲
先ほどまでは代表曲を上げさせていただきましたが、あまりにも代表曲が多いハイドン。そこでぜひ聞いてほしいおすすめの曲をご紹介します。
交響曲第44番「悲しみ」ホ短調
1772年に作曲されたこの曲は「悲しみ」という副タイトルがついていますが、これはハイドンがつけたものではありません。ハイドンがなくなった際、追悼のコンサートで演奏されたことからつけられたと言われています。
ホ短調の交響曲は当時とても珍しく、ぜひ聞いてほしい一曲です。
交響曲第94番「驚愕」ト長調
ハイドンの交響曲の中でおそらく最も有名な曲です。
多楽章形式の曲の場合、2楽章は静かでゆったりとした曲調であることがほとんどですが、こちらの交響曲はその概念を覆してくれます。
二楽章らしいゆったりとしたテーマがpとppで繰り返し演奏されたあとに突然ティンパニと一緒に全合奏で和音を鳴らします。ちょっとウトウトしかけていた聴衆がそれに驚いたことから「驚愕」と名付けられました。
とってもユニークな一曲です。どこで和音が鳴り響くのかドキドキしながら聞いてみてください。
交響曲第104番「ロンドン」ニ長調
ハイドンは音楽家として活動している間にロンドンへ訪問しています。その訪問に当たって12曲の交響曲を作曲しておりその交響曲は「ロンドンセット」と呼ばれています。
交響曲104番はロンドンセットの最後の曲となっており「ロンドン交響曲」と呼ばれています。
ハイドンが最後に作曲した交響曲でもあり、ハイドンの代表作です。
少し古い音源ですが、クレンペラー指揮ニュー・フィルハーモニアの演奏はおすすめです。こじんまりとした印象のハイドンの交響曲ですが、最後の交響曲にふさわしい壮大な解釈で演奏しています。
弦楽四重奏第1番「狩り」変ロ長調
まだバロック時代の名残を感じる曲です。
弦楽四重奏の父とも呼ばれたハイドンはとにかく沢山の弦楽四重奏を残しており、のちに活躍する作曲家たちに大きな影響を与えました。
そのことを象徴するかのようにモーツァルトは「ハイドンセット」として弦楽四重奏曲を6曲ほどハイドンに献呈しました。その中の一つ第17番がこの第1番と同じ「狩り」のタイトルがつけられ、同じく変ロ長調での作曲となっています。
モーツァルトの狩りは傑作としてとても人気がありますが、ハイドンが作曲しなければ出てこなかった作品でしょう。
ぜひハイドンとモーツァルトの「狩り」を聞き比べてみてください。
弦楽四重奏曲第67番「ひばり」ニ長調
第一楽章のヴァイオリンの奏でる主題がひばりの鳴き声のように聞こえることから「ひばり」として親しまれている曲です。
とても愛らしい曲でさらっと気負わずに聞ける一曲です。
弦楽四重奏曲第77番「皇帝」ハ長調
ハイドンの最高傑作と言われているのがこちらの曲。
四楽章構成の曲ですが最も有名なのは2楽章です。
詩人のレオポルト・ハシュカの作品に「神よ、皇帝をまもり給え」という詩があり、ハイドンはこの詩に音楽を付けました。
そのメロディーがこの弦楽四重奏の2楽章で変奏曲として登場します。
このメロディーはドイツ国歌にも採用され愛されていますが、ハイドン自身も亡くなる前日までこのメロディーを演奏しているほど思いれがあったと言われています。
また、ピアノ用に編曲されたものも発表されています。
まとめ
古典派時代は音楽が大きく飛躍した時代ですが、古典派時代の中だけでもバロック時代からの転換期である前期と後期の変化があります。「古典派時代」とひとくくりにせず、変化を感じながら古典派時代の音楽を楽しんでください。