楽器のトライアングルはなぜ三角形?円や四角形ではダメ?

楽器のトライアングルはなぜ三角形?円や四角形ではダメ?

打楽器のトライアングルは、オーケストラや吹奏楽などでよく目にする楽器です。三角形の形をしていますが、角の一つは欠けています。金属の棒を曲げて作られ、ビーターと呼ばれる金属の棒で打つと、澄んだ金属音が響き渡ります。強く叩かなくても遠くまで音が通るのが特徴で、舞台の奥で演奏しても客席の隅々まで音が届きます。見た目は非常にシンプルで、子どもでも簡単に音を出せますが、実際には毎回狙った音を均一に出すには熟練の技が求められます。演奏者によって音色の深みがまったく違うのも、トライアングルの奥深さを物語っています。

ここでふと疑問が湧きます。トライアングルとは英語で「三角形」を意味しますが、形自体は単純に棒を三角形に曲げただけ。もしそうなら、円や四角形の「トライアングル」があってもよさそうです(もちろん楽器名は「サークル」や「スクエア」に変わるでしょうが)。では、なぜ三角形だけが楽器として定着したのでしょうか。また、一部が欠けている理由は何なのでしょうか。今回は、その形に込められた意味を考えてみます。

トライアングルはなぜ一部が欠けているのか

トライアングル

トライアングルの一辺が欠けているのは、音の響きを妨げないためです。三角形が完全に閉じていると、叩いたときの振動が棒の中で互いに打ち消し合い、こもったような音になってしまいます。欠けを作ることで振動が逃げ道を得て、音がより自由に響くようになるのです。

また、この欠けは「吊り下げやすさ」にも関係します。多くのトライアングルは糸や紐で吊るして演奏しますが、欠けの部分に紐を通すことで安定して支えることができ、演奏の自由度も増すのです。

もしトライアングルが円形だったら

円

もしトライアングルが円形だったら、どうでしょうか。まず吊り下げにくく、演奏中にくるくる回ってしまう可能性があります。さらに、円ではどこを叩いても似たような音しか出せません。音に変化をつけにくく、音楽的な表現が乏しくなってしまうのです。角が存在しないため、角を使ったトレモロ奏法(細かく連続して打つ奏法)もできません。

四角形・五角形ではどうか

四角

三角形が選ばれたもう一つの理由は、角度の問題です。正三角形の内角は60度と鋭角で、この鋭さがトレモロ奏法に適しています。演奏者は角にビーターを滑らせるように当て、細かく連続した音を生み出します。ところが、正方形では90度、正五角形では108度と角度が広がりすぎ、滑らかなトレモロが難しくなります。六角形や八角形にすれば角は増えますが、どれも角度が鈍角になってしまい、やはり演奏には不向きです。結局、三角形こそが「響きの良さ」と「奏法のしやすさ」を兼ね備えた最適な形だといえるのです。

まとめ

トライアングルが「なぜ三角形なのか」「なぜ一部が欠けているのか」という疑問を考えてきました。単純に見えるトライアングルですが、実は音の響きや演奏技術、さらには歴史的な工夫によって洗練され、今の姿になっています。楽器の形には必ず理由があり、三角形のトライアングルもその一つの答えなのです。シンプルでありながら奥深いこの楽器は、オーケストラの中で小さな存在ながら確かな輝きを放ち続けています。

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