

「子犬のワルツ」ってどんな曲?子犬にはモデルがいた!
フレデリック・ショパン。その名は、ピアノの詩人として、甘美で繊細な旋律を紡ぎ出した作曲家として、今もなお世界中の人々の心を捉えて離しません。彼の作品の中でも、ひときわ親しみやすく、愛らしい旋律を持つのが「ワルツ第6番 変ニ長調 作品64-1」、通称「子犬のワルツ」です。
この短いながらも魅力溢れる楽曲は、一体どのような背景を持ち、私たちに何を語りかけてくるのでしょうか?その軽快なステップの裏に隠された作曲家の想い、恋人ジョルジュ・サンドとの甘美な記憶、そしてその愛らしいタイトルにまつわる子犬の存在。本稿では、「子犬のワルツ」の多角的な魅力に迫り、その普遍的な人気の秘密を解き明かしていきます。
くるくると駆け回る愛らしさ。「子犬のワルツ」が描く情景
「子犬のワルツ」を初めて聴いた時、多くの人がまず感じるのは、その軽やかでリズミカルな旋律でしょう。まるで小さな犬が、嬉しくてたまらない様子で、くるくると楽しそうに駆け回っているような情景が目に浮かびます。変ニ長調の明るく華やかな調性は、その印象をさらに強くします。
楽曲は、短い導入部の後、すぐに特徴的な主旋律が現れます。速いテンポの中で、装飾音符が効果的に用いられ、その動きはまさに子犬の予測不能で愛らしい動きそのものです。中間部では、少し落ち着いた旋律が現れますが、すぐに再び軽快な動きを取り戻し、最後は駆け足で終わるように、あっという間に幕を閉じます。
その演奏時間の短さも特徴の一つで、一般的には2分前後で演奏されます。この短い時間の中に、ショパンは子犬の無邪気さ、愛らしさ、そして一瞬のきらめきを見事に凝縮させていると言えるでしょう。
タイトルに隠された物語。「子犬」にはモデルがいた!
この愛らしい楽曲に「子犬のワルツ」というタイトルが付けられた背景には、興味深いエピソードが存在します。1846年、ショパンは恋人であったフランスの女流作家ジョルジュ・サンドと共に、彼女の故郷であるノアンにある別荘で過ごしていました。
ある日、サンドの飼っていた小犬が、自分の尻尾を追いかけてくるくると回る様子をショパンが見て、大変面白がったと言われています。その愛らしい光景が、この軽快なワルツのインスピレーションになったという説が有力なのです。