縁の下の力持ち!コレペティートルのお仕事
ピアノの仕事と聞くと、どんなお仕事が思い浮かびますか?
ソロで演奏するピアニスト、ピアノ講師、調律師、音楽制作などが一般的なピアノの仕事に対するイメージだと思います。
ピアノのお仕事の中に「コレペティートル」というオペラに関係するお仕事があるのです。このお仕事、日本ではあまり知られていません。
今回はコレペティートルのお仕事をご紹介させていただきます。
オペラとは?
コレペティートルのお話の前に、少しオペラについて説明します。
オペラを鑑賞したことはありますか?
オペラは「歌劇」とも呼ばれている演劇に音楽がついた舞台芸術です。
「ミュージカルと何が違うの?」と思われるかもしれません。
オペラは台詞にすべて音楽がついていて、時にはバレエの要素が含まれることもあります。いわば芸術のすべてが詰まった「総合芸術」と言っても過言ではありません。
しかしながら、現在オペラは日本において「最も採算のとれない興行」とされています。
オペラの本番にはたくさんの人が関わっています。
- ソリスト
- 合唱
- 指揮者
- 舞台監督
- オーケストラ
- 衣装・メイク
- 舞台装置
- 照明
- 字幕
すごいですよね。さらに海外からの引っ越し公演となると人件費のほかに交通費なども嵩み、どうしてもチケット代が高くなってしまいます。そのため、基本的には企業などにスポンサーになってもらって公演を行うことが多いです。最近ではコストを抑えてオペラを身近に感じてもらうために、オーケストラと指揮者、歌い手だけによる「コンサート形式」による公演が増えています。
あれ、このオペラに関わる人の中に「コレペティートルいない?」と思われましたか?
先ほどあげたものは「オペラの本番に関わる人」です。
コレペティートルは縁の下の力持ち。本番前の稽古で大活躍しています。それではコレペティートルのお仕事を見ていきましょう。
コレペティートルってなあに?
コレペティートルは簡単に言うと「稽古ピアニスト」です。
オペラはオーケストラと一緒に公演を行いますが、稽古の段階から毎回オーケストラをつけるわけにはいきません。
オペラには「ピアノ譜」と呼ばれるオーケストラのスコアをピアノ伴奏用にした楽譜が存在します。このピアノ譜による伴奏でオペラの稽古は進みます。
ぱっと聞くとそんなに大変ではなさそうですよね。
しかしオペラの上演時間は3時間前となかなかの長丁場のものが多く、これを楽譜にすると400ページ以上なんてことは当たり前の世界なのです。
稽古の前には役ごとに色分けをしたり、分厚い楽譜の譜めくり対策、歌詞の訳などやることは膨大にあります。
譜読みだけでも一苦労ですが、コレペティートルの仕事はただ稽古の伴奏をするだけではありません。
・歌手の言語指導
オペラは基本的にドイツ語、イタリア語、フランス語で歌われます。この言語指導もコレペティートルのお仕事です。母国語ではない言葉を何か国語も流暢に話せる人はなかなか少ないです。そのため、コレペティートルは歌手の発音やアクセントの位置を指導します。
・アンサンブル指導
実際に演技をつける前のアンサンブルの指導もコレペティートルのお仕事です。指揮者も一緒に稽古をすることもありますが、指揮者不在の際はコレペティートルが指導します。
・立ち稽古
実際に演技をつけながら行う稽古です。この時歌い手は楽譜を持たずに稽古をしていますが、演出家の指導が入ることがあります。そのときにスムーズにどこのことを言っているのかすぐに対応できるように、コレペティートルは後ろから声をかけてあげます。ピアノ譜を追うだけではなく、歌手と演出家の様子も伺わなくてはならないので大忙しです。
この他にも稽古の休憩の合間にも歌い手が個人的に稽古したいと申し出てくることは日常茶飯事。息つく暇もありません。
まとめ
いかがでしたでしょうか。日本ではあまり認知されていないコレペティートルですが、海外では指揮者と同じぐらい大切な存在です。公演本番に舞台に出ることはありませんが、コレペティートルがいなければオペラは上演できないほど大切な存在です。
コレペティートルは中途半端な努力ではできませんが、とってもやりがいのあるお仕事です。
オペラとは無縁なピアノですが、実はこんなに必要不可欠な存在だったのかと思うとなんだか誇らしくなります。オーケストの変りもできるピアノ。練習するときはその音色を楽しみながら弾いてくださいね。