ピアノの名曲をプロファイル!「エリーゼのために」<前篇>
ベートーベンは1810年にバガテル「エリーゼのために」を作曲しました。バガテルというのは短いスケッチのようなピアノ曲のことを指します。イ短調で書かれ、形式はロンド形式でABAC Aです。Aが3回もでてきますから、ここが出来ると曲の大半が弾けることになりますね。Aの部分は、ピアノのレッスンを始めたばかりの大人の方でも、ゆっくり練習すれば弾けるようになりますから、名曲の美しいメロディーを是非味わって下さい。
本解説は楽譜「全音ピアノ名曲100選」を題材としております。
エリーゼは誰のために?
「エリーゼのために」は誰もが一度は聞いたことのある、そしてピアノを始めた人が弾いてみたいと思う有名曲ですね。
このように有名な曲なのに、実はエリーゼが誰なのかわかっていません。ベートーベンの周りの人の中に、エリーゼという名前の人はいないのです!
長い間、この曲は,ベートーベンが愛した女性のテレーゼ・マルファティのために書いたという説が有力でした。というのも、この曲はベートーベンの死後、テレーゼの書類から発見されたもので、ベートーベンがあまりにも悪筆だったため、テレーザ(Therese)がエリーゼ(Elise)と見えたのではないかと言われてきました。
2010年、ドイツの音楽学者コーピッツが、ベートーベンの友達の妹でソプラノ歌手のエリザベート・レッケルのために作曲したのではないかという仮説を出版し話題になりました。しかしベートーベン直筆の楽譜は失われているので、真偽のほどはわかりません。謎が、この曲をより魅力的にしているのかもしれませんね。
それでは曲の演奏のポイントを楽譜と共に見ていきましょう!
なめらかな Aの部分
Aもa b aとまた3つの部分に分かれています。拍子は8分の3拍子、8分音符が1拍ですね。曲の出だしは弱起(アーフタクト)で、拍の足りない不完全小節から始まります。出だしのミ#レは3拍目(弱拍)なので強くならないようにしましょう。2拍数えてから弾き始めるようにすると綺麗なフレーズを作ることができます。
この部分は、2カッコから始まるbの少し明るくなる部分から aに戻る架け橋になります。左手右手を切れ目なく、一本の手で弾いているようになめらかに弾いて下さい。
まとめ
始めのAの部分は、スラーがついているフレーズを切れないように弾くことが大事です。なめらかに、静かに哀愁のある美しいメロディーを歌って弾いて下さい。
後編では、 BとCの部分を取り上げます。
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